最高の京都地図帳とおもっているものがある。
ゼンリンの『京都市道路地図』だ。
京都市中心部が縮尺5000分の1で掲載されている。
が、これだけなら類似品はある。
宅地一軒一軒、描かれている。
とてもみやすい。
道路幅のデフォルメもすくないようだ。
大事にすぎた。
毎日もちあるいた。
市バスに忘れてしまった。
みつからなかった。
もう1冊買おうと思った。
おそかった。
もう生産中止になっていた。
古書店でさがした。
まったく見つからなかった。
サイト「日本の古本屋」でもみつからなかった。
友人にも古書店などでの捜索を頼んだ。
みつけてくれたらいい値で買うといった。
定価は1350円。
いい値が1万円でも買うつもりだった。
それでも手に入らなかった。
本日、京都女子大学に行くために京都駅前からタクシーに乗った。
座ったら、まん前、助手席の背後の網ふくろにみたことのある地図がさしてあった。
あ、あの地図だ。
びっくり。
お客さんがみるためだろう、おいてあった。
運転手さんの愛用のものだろう。
いっぱいマーキングしてあった。
綴じがはずれたページもあった。
勢いで言った。
「どうしても急に京都の地図がいるんだが、これ、定価で売ってくれませんか」
断られるかと思った。
が、
「え、こんな古いものでいいのですか」
「全然平気です。いいですか」
「そら、いいですけど」
「じゃあ、いまもう払いますね」
と、信号待ちのとき、1350円ちょうどを運転手さんに渡した。
あっというまのことだった。
降りるとき、運転手さん、また申し訳なさそうに「すいませんね、古い本なのに、定価で」といった。
口数少なく、お礼を言っておりた。
5年。
5年かかった。
ついに取り戻した。
感慨無量。
さっそく京都女子大学の講義でこのはなしをした。
バカ受けした。
キャンパスプラザの「基礎からまなぶ日本歴史」でも話した。
また受けた。
幕末の志士、平野次郎(国臣)のはなし。
その下宿を捕り手が襲った。
たまたまそのとき、平野は遊郭にいっていて不在だった。
だから逮捕されなかった。
帰宅後、捕り手がきたことを聞かされた。
偶然助かったことをしった。
直後に知人に手紙を書いた。
「いままで遊郭でどれだけ散財したか、なんと無駄なことをしているか、とおもっていた。が、今日のことで全部帳消しになった」。
同じ思い。
京都女子大学に行くのに毎度タクシーをつかっていた。
遅刻はいやだから。
なんて無駄なことをしているのだと腹立たしかった。
が、そのおかげでついにあの地図帳が手に入った。
全部帳消しだ。
願いはかならずかなう。
時間さえかければ。
あせらず、その日をまちましょう。みなさん。